ベルリンはいつも刺激的だ。他のヨーロッパの街は長い時間をかけて変化していくのに、この街は早回しのように移り変わる。早送りされた歴史は、すぐそこ、手の届く所にある。

ベルリンの現代史を象徴するテンペルホーフ空港。1923年開港、第二次大戦中にヒトラーの命により建築家Ernst Sagebielの設計で改修。戦後の東西冷戦下、東ドイツの真ん中の西側の飛び地である西ベルリンのこの空港は、ソ連によるベルリン封鎖の際の空輸作戦「ベルリン大空輸」が行われた場所として知られる。2008年10月、現在の旅客機の離発着には小さすぎるため閉鎖され、私が訪れた2010年8月の時点では小規模なガイドツアーで中が見学できるようになっていた。改修されたのが大戦時で当時は軍用に利用されたためだろう、非常にシンプルな構造で、なかなか美しい空港だ。

人がいてしかるべき空間に誰もいないというのは不思議な感覚を呼び覚ます。映画やドラマだとさしずめモノクロの静止画面で、有りし日の人の声や様々な雑音だけがフラッシュバックのように聞こえる、ちょうどあんな感じだ。

建物の中は入場が制限されているが、滑走路を含めた広い屋外のスペースは市民に開放されている。野鳥を呼び定着させる取り組みが行われ、公園のように走ったり歩いたり、凧揚げをする人がいたり。街中にぽっかり空いた大きな平らなこの場所には実に気持ちの良い風が吹き抜ける。私も日が傾きかけた時間にぐるりと歩いて思い切り空気を吸ってみたーちょっと歴史の香りがしないかな、などと思って。

2010-08-31 / Berlin, Germany (ドイツ・ベルリン) / Nikon D300 / 24-70mm F2.8 / 24mm / F6.3 / 1/40s